年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
青臭い理想か 現実に沿った未来か

1



「こちらは少しシックな雰囲気になります。大人っぽさを演出したいカップルにおすすめで……」

愛想よく話すプランナーさんはとても手慣れていて、ここはイチオシです、と熱っぽく語ってくる。その声を聞くともなしに聞き流しながら、完璧にテーブルセッティングされた会場内を見渡す。
ああここ、そういえば大学の同級生の結婚式で来たことあるな。あの階段からド派手なピンクのドレスで登場してたっけ……。

「お二人なら、こういう落ち着いた雰囲気の会場がピッタリだと思うんですよ」

「はあ、そうですねえ……」

明らかに気のない返事を返す私にも、そのプランナーはくじけない。晴れた日はお庭に出てガーデンビュッフェ、大スクリーンは三箇所もついているから映像の演出も、それにあの階段はひと手間かけた登場が可能で……。

一つ一つに相槌を打ちながら、まだ他にもここで挙げた子いた気がするなあ、なんてぼんやり考える。
三十にもなればそれなりに結婚式の出席回数も重なって、どんな演出でどんな流れで進んでいくかは大体見当がつく。


その日は見学だけ、のつもりだったし、具体的に日取りまで持ち出してきたプランナーさんを適当に嘘をついて躱して、早々に式場を後にした。たくさん説明してもらったはずなのにイマイチ印象に残らなくて、お土産替わりにもらった引き出物の焼き菓子の味が、意外に美味しいことだけがその会場の印象になる。
< 183 / 462 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop