年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「お前なあ、もっと興味ある顔しろよ。途中からあのプランナーに同情したぞ、俺」
車に乗り込んで早速焼き菓子を頬張っている私に、運転席から祥裄が呆れた目を向けた。
「女って普通、こういうの好きなんじゃないのか?
まあ、お前は式場見学で浮かれるタイプじゃないとは思ってたけど、にしたって実際の会場を見たら、もっとテンション上がってもいいと思うんだけど」
「だってここ、何回か来たことあったわ。会場見て思い出した。可も不可もなく、って感じの普通の結婚式だったよ」
「他人の結婚式と自分の結婚式は違うだろうが」
「式を挙げたがってるのは私じゃないもん。別にこだわらないからさ、なるべく安く挙げられるところがいいよね、やっぱり」
まったく夢のない私の発言に、まあお前がそれでいいんならいいけどさ、とぶつくさ言いながら、祥裄が車を発進させた。
――祥裄と結婚することになりそうだから、もうお見合い写真は受け取らないでくれ。
そう話すと、電話の向こうのお母さんの声がぱあっと変わった。狂喜乱舞している様子が手に取るようにわかる。
『でかした、ちゃんと引き戻したのね。まあよかった、祥裄くんも寛大ね、あんたみたいなのをもう一度拾ってくれるなんて』
寛大なのは私だ、バカなこと言うな、と怒鳴り返したくなったけど、それを説明すればまた面倒なことになるのはわかっているのでぐっと飲み込む。
「まあ一応、そんな感じで話はしてるけど、別にまだ具体的に時期とか決めた訳じゃないから……」
『何言ってるの、また逃げられたらどうするの? 早く話を進めちゃいなさい、祥裄くんの気が変わらないうちに!』
我が母ながら本当に遠慮のない言い方だなと思うけど、それだけ真剣に私の結婚のことを心配していたんだろう。安心させられてよかったかな、と少しだけ自分の決断に自信が持てた。