年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
大輔くんの家から泣きながら帰って、ロボットのように事務的に身支度を整えて出勤したあの日。

一日中意識が方々に散って、全く仕事にならなかった。

風邪でもひいたかと会う人会う人に心配されて、打ち合わせをしたお客様にも大丈夫ですかと訊かれる始末。これじゃダメだと思って、その日は残業はせずすぐに会社を出て、祥裄をシェリーに呼び出した。


本当にこれでいいんだろうか。
大輔くんじゃなく祥裄を選んで、私は後悔しないのか。

もう何度も繰り返した問いをこの期に及んでまだ問い返して、思考のループに迷い込もうとするのを、懸命に振り払う。
悩み続けているだけじゃ、背中を押してくれた大輔くんにも失礼だ、と思った。

先にシェリーについて、食事をしながら待つ私の顔を見るなり、祥裄は硬い表情で言った。


「もしかして、最後のトドメを刺されるのか、俺?」


座りもせずに固まって私を見下ろす。一体どんな顔をしているんだろう、今の私は。


「そうよ。トドメよ。……座ったら?」


促すと言われるがまま椅子に座って、バイトくんに差し出されたおしぼりを受け取ってじっと見つめている。いつもはすぐにビールを注文してるのに、それさえしない。

「あのボウヤのどこがそんなにいいんだ? 確かに可愛い顔してるけど、あのレベルならそこらにいるだろ。もうひとりのモデル男ならともかく」

モデル男って誰だ? 辻井さんか?
どうでもいいけど、今の言い方じゃ自分はそこらにはいないレベルのルックスだと思ってるのが丸分かりだ。こいつは本当に自分に自信があるな。
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