年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「顔だけで選んでるみたいに言わないで」
「顔以外に何があるよ? 性格か? まだ知り合ったばっかで何も知らないだろ?」
「少なくともあんたみたいに自意識過剰ではないわ」
のっけから会話が喧嘩腰になって、伝えようと思っていることからどんどん離れていく。
ちょっと落ち着こう、と私が水のグラスに口をつけると、祥裄もようやくバイトくんを捕まえて注文していた。
「……この前言ってたこと、本気?」
「あ?」
「その……結婚しよう、って言ってくれたこと」
私の言葉に、祥裄が意外そうにこちらを見る。
ようやく話の方向が正しい方を向きそうだ。
「本気だよ。なんなら今から役所行くか?」
「今からは遠慮しとくわ。お母さんにはすぐに話させてもらうけど」
「……それは、俺を選んだってことでいいのか?」
祥裄の目がにわかに真剣味を帯びた。そうやって真面目な顔をされると、ルックスに自信満々なだけあって、思わず見入ってしまう。
「だから、トドメよ。もう他の女にフラフラできないんだからね?」
「わかってる。沙羽しか見ない。一生お前だけだ」
そんなセリフを余裕で口にして、しかも似合うんだからズルイと思う。
……大輔くんだったら、照れくさそうにするのかな。それとももっと必死な顔をするだろうか。
ふとそんなことを考えかけて、すぐに意識の外に追い出した。もう、会うこともない。
「これからよろしくお願いします」
私がそう言って小さく頭を下げると、祥裄が今まで見たことないような、無邪気な子供みたいな顔で笑った。
「こちらこそよろしく。……俺を選んでくれてありがとう」