年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
隣の祥裄を見上げると、私の視線にすぐに気付いて、どうした、と声をかけてくれた。

なんでもない、と首を振る私に笑いかけるその顔は、やっぱり私にはもったいないくらい、整っている。祥裄との結婚を迷うこと自体、私には分不相応。


幸せになるんだ。
誰もが羨む結婚をして、親孝行もして、勝ち組になる。
そんな人生の、どこに迷う余地がある?


繋いだ手に力を込めて、雑念を追い払った。

今の私は順風満帆、ささいな迷いに振り回されている隙などない。 


夜桜を堪能した後は、たまにはシェリーじゃないところで、と手近なダイニングレストランで夜ご飯を食べてから、当たり前のように私の家に二人で帰る。

いつ泊まっていってもいいように、いつの間にかまた祥裄の私物が増えていた。部屋着はもちろん、ワイシャツなんかも置かれていて。
あっという間に別れる前の状態に戻っていて、祥裄が浮気してからの半年間は、まるで嘘か夢のように思えてくる。


確かに、夢だったのかもしれないな。

お互いの存在が当たり前になりすぎていた私たちに神様が与えてくれた、未来を考えるための時間。
惰性が顔を覗かせていた私たちの関係を見直すための、少しの刺激。

それを乗り越えてきちんと軌道修正したんだから、これでいいんだ。
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