年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
ごそごそ体の向きを変えて、祥裄に背を向ける。
私は後ろからすっぽりと抱きかかえられる体勢が好きで、祥裄もそれを心得ていてすぐに後ろから包み込んでくれた。


「……お前はどうなんだよ?」


耳元に直接響く祥裄の声は、まだ不機嫌さが残っている。


「なにが?」

「あのボウヤと寝た?」


素っ気無さを装っているけれど、実は結構嫉妬深いのを知っている。


「寝てないよ。何もしてない」


正確にはキスはしたけれど、なんとなく言わないほうがいい気がして、小さな嘘を付いた。

祥裄の息遣いをすぐ近くで感じながら、大輔くんと一度だけ交わしたキスを思い浮かべる。ぎこちなくて全然余裕はないのに、からだの芯を燃え上がらせるようなキス。

あの時最後まで受け入れていたら、今頃何か変わっていただろうか。


「……なんにも、なかったよ」


きっと変わっていなかっただろう。すぐに私の迷いを見抜いて、きっと大輔くんは同じように身を引く。ならば彼と祥裄を比べずに済んだだけ、今のほうがマシだ。

体の前に放り出された祥裄の手に触れると、祥裄は片手だけ持ち上げて、半年前に比べて随分短くなった私の髪を梳き始めた。手の感触が大輔くんとはやっぱり違うな、とぼんやり思っていると、以前のようにひと房掬って、口づけられる。


昔のような喜びも、怒りすら、感じることはできなかった。
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