年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
2
◇
連れてこられたのは給湯室ではなく、資料室だった。
扉を閉めれば完全に他の視線を遮断できる、給湯室よりもさらに深い話が出来るところ。
ぽつぽつ社員が帰り始めて、珍しく居残っていた絵里ちゃんが思いつめた顔で私に近付いてきた時、とうとう来たか、と思った。私はまだ社内の誰にも話していないのに、一体どこから嗅ぎつけてきたんだろう。
元サヤに戻ったりしないで、という言葉に、はっきりわかったと了承した私が、あっさり祥裄とヨリを戻したこの状況を、絵里ちゃんが黙って見ているはずないとは思っていた。
それでも、文句を言われる筋合いもない。半年前の彼女の言葉を借りれば、祥裄が絵里ちゃんと別れた以上、今の彼女は私だ。
先に私を中に入れて、絵里ちゃんが続いて中に入って扉を閉める。
扉のすぐ近くに絵里ちゃんが立つことで、なんだか退路を絶たれたような、心許ない気分になるのは、絵里ちゃんの策略のうちか。
絵里ちゃんは俯いたまま、黙っていた。
私から何か言って噛み付かれるのが面倒で、そのままこちらも黙って様子を見ていると、しばらくして小さな声で話し始める。
「沙羽先輩、結婚、するんですか?」
元サヤに戻ったことだけじゃなくて、結婚まで情報が回ったか。
「うん」
簡潔に返事をすると、ようやく絵里ちゃんが顔を上げた。
「祥裄さんと?」
「そう」
連れてこられたのは給湯室ではなく、資料室だった。
扉を閉めれば完全に他の視線を遮断できる、給湯室よりもさらに深い話が出来るところ。
ぽつぽつ社員が帰り始めて、珍しく居残っていた絵里ちゃんが思いつめた顔で私に近付いてきた時、とうとう来たか、と思った。私はまだ社内の誰にも話していないのに、一体どこから嗅ぎつけてきたんだろう。
元サヤに戻ったりしないで、という言葉に、はっきりわかったと了承した私が、あっさり祥裄とヨリを戻したこの状況を、絵里ちゃんが黙って見ているはずないとは思っていた。
それでも、文句を言われる筋合いもない。半年前の彼女の言葉を借りれば、祥裄が絵里ちゃんと別れた以上、今の彼女は私だ。
先に私を中に入れて、絵里ちゃんが続いて中に入って扉を閉める。
扉のすぐ近くに絵里ちゃんが立つことで、なんだか退路を絶たれたような、心許ない気分になるのは、絵里ちゃんの策略のうちか。
絵里ちゃんは俯いたまま、黙っていた。
私から何か言って噛み付かれるのが面倒で、そのままこちらも黙って様子を見ていると、しばらくして小さな声で話し始める。
「沙羽先輩、結婚、するんですか?」
元サヤに戻ったことだけじゃなくて、結婚まで情報が回ったか。
「うん」
簡潔に返事をすると、ようやく絵里ちゃんが顔を上げた。
「祥裄さんと?」
「そう」