年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「そういう時に支えになってくれるのがスペックだと私は思うわけ。これだけのものを与えてくれるなら、まあ我慢してもいいかあ、って思えるような条件があれば、好きっていう気持ちが冷めても一緒にいられるじゃない。
人の感情なんてあっさり変わるもんよ。結婚しても子供が出来てもずっと恋人みたいでいられる関係が理想です、なんて幻想よ、幻想」
可愛い声でシナを作ってから、ケッと真顔に戻って言い捨てた。
「瑞香と旦那さん、今でもすごく仲いいじゃない」
「私は冷静に選んだからね。感情と妥協がいい具合にバランス取れてるチョイスだわ、って昔の自分を褒めてあげたいくらい」
ふふん、と満足げに頷いて、私を見る。
「祥裄くんなんて最高じゃない。女なら十中八九思うわよ、理想の恋人だって」
びしっとお行儀悪く瑞香が私にフォークを突きつける。
「迷うな、進め! わんこへの未練なんてその辺に捨ててこい!」
すでに少し酔っ払ってるんじゃないかと思うような瑞香のテンションに乗せられて、私も赤ワインを注文した。次の肉料理と一緒に持って来てもらうよう頼むと、まだ白ワインを抱えている瑞香も便乗して注文している。
「青臭い理想よりも、現実に沿った未来を考えなさい」
瑞香が語る恋愛論を聞きながら、スズキを口に運ぶ。
かけられたソースが少し、ほろ苦く感じた。