年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「一個だけ、今の沙羽ちゃんの言葉を訂正してあげよう。
大輔が沙羽ちゃんに出会ったのは、半年前じゃないよ。もっと前」
「え?」
今日のマスターは予想外のことばっかり言ってくる。あの雨の日以前に、どこで私が大輔くんと知り合うと言うのだろう。
「いつだって言うんですか?」
「気になるなら本人に聞けばいい。俺からは教えてあげない。
……でもこれだけは教えとくよ。沙羽ちゃんが思っているよりもっと、あいつは沙羽ちゃんのことを見てる」
思わせぶりなことを言って、マスターはそれ以上は、どんなに問うような視線を向けても教えてくれなかった。
中途半端な情報だけ残って、食べ過ぎた時の胃もたれみたいに頭の中を圧迫する。モヤモヤする気持ちを落ち着けようとひたすらグラスを傾けていると、後ろから遠慮がちに声をかけられた。