年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

5



自分がこんなにも意気地無しだとは、今まで思っていなかった。

シェリーでマスターと咲さんと話したあと。

大輔くんに連絡を取ってみようかと何度か携帯を取り出して文章を打つものの、最後の送信ボタンがどうしても押せなかった。
今更会ってどうする、会ってまた揺れるよりは、このままシェリーで聞いた話も忘れてしまったほうがいいんじゃないだろうか。ぐるぐる言い訳が頭の中を回って、私を逃げる方向へ導いていく。

それに、大輔くんと葉月ちゃんが並んでいる姿が、ずっと頭を離れなかった。

今更、大輔くんの片想いの話を聞いたって、それは過去だ。
今はもう、彼も新しく前を向いているんだから。

頭では、そう、理解できるのに……私はまだ、大輔くんへの思いをすっぱりと断ち切ることができないでいた。


母親には電話で毎日のように、早く式の日取りを決めろとせっつかれた。
式場探しは、私のめんどくさがりが功を奏したのかどうなのか、二軒目に見に行ったところがこじんまりとしていい雰囲気だったので、もうそこでいいんじゃないかとあっさり終了してしまった。契約こそまだしなかったけど、多分そこで挙げることになると思う。

プランナーのお姉さんからは、いい日はもうほぼ埋まってますから、決めるならお早目に、とくどいほど言われた。でもまだ契約してしまう勇気を持てなくて、適当に言い訳をして逃げる私を、祥裄は黙って見ていた。


多分、私がまだ踏ん切りをつけられないでいるのを、祥裄はわかっている。
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