年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
もっと強い人だと思っていた。
なにがあっても跳ね返して、不遜なまでに自信家で、私の迷いだって、きっと笑い飛ばしてしまうと勝手に思い込んでいた。


「ごめん……」


私が迷うことでここまで祥裄を不安にさせていたなんて、まったく思いもしなかった。


「謝んなよ。ごめんなんて言って欲しいわけじゃない」


私が胸の前で組まれた祥裄の手にそっと触れると、腕の力が緩んだ。祥裄との間に少しだけ隙間が出来て、私は腕の中で体を反転させて、今度こそ祥裄と向かい合う。

合わせた目は、頼りなく揺れていた。今までに見たことがない、迷子の子供みたいな目。


――もういい加減、大輔くんのことを考えるのは、やめなきゃ。


自分が選んだこの人に、こんな顔をさせちゃいけない。


「……夜景が見えるレストランがいい」


両手で顔を包み込んで、額をこつん、と合わせた。


「ちゃんとオシャレして、思いっきり甘い言葉でプロポーズして」


そのまま目を覗き込むと、ようやく祥裄の表情も和らいだ。抱きしめられる腕に、また力がこもる。


「お前が嫌がるくらい、歯が浮きそうな言葉を並べてやるよ」


やっと少し笑顔が浮かんで、いつもの強気な口調でそう言って、そのまま唇が近づいた。
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