年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
◇
その日は、例年よりも時期が遅い新人歓迎会だった。
うちの会社はアットホームな雰囲気で社員同士の仲もいいので、みんな気軽に席を移動して好き好きに盛り上がっている。
熱く建築について語り合う人もいれば、ただただ家庭の愚痴を言い続ける人もいる、この混沌とした雰囲気は嫌いじゃない。
「沙羽せんぱーい、飲んでますかあ?」
みんなお酒が回って無礼講になりつつある中、顔を真っ赤にして舌っ足らずな声でビールの瓶を抱えてきたのは、絵里ちゃんだった。
どことなく周りの視線が集まったような気がして、少し居心地が悪い。
「飲んでるよ。絵里ちゃんはちょっと飲み過ぎなんじゃないの? もうお酒はやめとこうよ」
空いていた私の右隣の席に陣取った絵里ちゃんの手からビールを奪い取ると、私の左隣に座っていた明日香ちゃんがその手に烏龍茶のグラスを握らせた。
「ギャラリーたっぷりの中で沙羽先輩に絡めるあんたの神経の図太さには、呆れを通り越して尊敬するわ」
「カラミに来たんじゃないもん、お礼言いに来たんだもん。明日香のバカぁ」
明日香ちゃんの言葉に、ふんっ、と鼻を鳴らす。烏龍茶をごくごく飲み干してから、突然私の両手を握り締めた。
その日は、例年よりも時期が遅い新人歓迎会だった。
うちの会社はアットホームな雰囲気で社員同士の仲もいいので、みんな気軽に席を移動して好き好きに盛り上がっている。
熱く建築について語り合う人もいれば、ただただ家庭の愚痴を言い続ける人もいる、この混沌とした雰囲気は嫌いじゃない。
「沙羽せんぱーい、飲んでますかあ?」
みんなお酒が回って無礼講になりつつある中、顔を真っ赤にして舌っ足らずな声でビールの瓶を抱えてきたのは、絵里ちゃんだった。
どことなく周りの視線が集まったような気がして、少し居心地が悪い。
「飲んでるよ。絵里ちゃんはちょっと飲み過ぎなんじゃないの? もうお酒はやめとこうよ」
空いていた私の右隣の席に陣取った絵里ちゃんの手からビールを奪い取ると、私の左隣に座っていた明日香ちゃんがその手に烏龍茶のグラスを握らせた。
「ギャラリーたっぷりの中で沙羽先輩に絡めるあんたの神経の図太さには、呆れを通り越して尊敬するわ」
「カラミに来たんじゃないもん、お礼言いに来たんだもん。明日香のバカぁ」
明日香ちゃんの言葉に、ふんっ、と鼻を鳴らす。烏龍茶をごくごく飲み干してから、突然私の両手を握り締めた。