年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「……片桐さんは、どんな恋愛が理想ですか?」
いきなりそんな質問が飛んできて戸惑うと、辻井さんは苦しそうな表情を一転させて、口元に笑みを浮かべる。
「理想の結婚、理想の関係。相手に求めるもの。一番必要だと思えるもの。別に安定とか金とかでもいい。周りから求められているものじゃなくて、自分がどうしても譲れないもの。それが巡って周りの幸せを一番に望むなら、それでもいいんですけど」
私にとっての理想。お金とか安定なんてどうでもいい。
ただ一緒にいて、心からくつろげる、安心感……。
「あなたと大輔の関係は、俺の理想です。ありのままお互いを受け入れられる関係。今ならまだ手を伸ばせばそれが手に入る、あなたがとても羨ましい」
話しながら、その目が徐々に穏やかさを取り戻していった。
鋭い気配が消えていって、一度目を閉じて再び開くと、そこにはいつものよく知っている気配があった。
――仮面を、被ったんだと思う。