年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
フロアの奥、隠れるようにして存在する非常階段へのドアは、普段全くと言っていいほど開かれない。

ドアがあることすら知らない人も多いような、そんな見向きもされない場所を、私はとても気に入っていた。必ず一人になれたし、晴れた日は意外と気持ちがいい。


手すりにもたれてぼんやりコーヒーを飲みながら、そういえばここでよく泣いたなあ、とまた懐かしい記憶に浸る。


入社して、ここを見つけてからは、泣くときは必ずここに来た。
落ち込んだり、悔しかったり、そういう時はここでひとしきり泣いて、立ち直ってからまたデスクに戻る。

ここで私が泣いていたことは誰も知らない。祥裄にすら言ってない。
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