年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「初めて片桐さんに会ったの、カラーモデルを捕まえに行った時だっけ?」
辻井さんも話に乗って、どうやら膨らませてくれるようだ。
「はい。一人でモデハン行き始めた頃に」
モデハン? 専門用語はできるだけ使わないで欲しい。
「モデハンってなんだっけ?」
私の頭の中を読んだように、マスターがナイスタイミングで質問を挟む。
「モデルハントですよ。カットとかカラーの練習台になってくれる人を探しに行くんです」
ああ、いつも声をかけてくるあの美容師さんたちがしていることか。大輔くんもやってるんだ、ああいうの。
「断られまくって落ち込んでる時に沙羽さんが助けてくれたんです。あの時いろいろ壁にぶち当たってて、究極に美容師を辞めたくなってた時期だったんですけど、沙羽さんの一言に救われて」
大輔くんに声をかけられたことなんて一切覚えていない。
何言ったんだろう、私。