年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「その女神さまが手の届くところに現れてくれて、さぞかし嬉しかっただろ?」
辻井さんが笑って言う。
「ノーブルの窓から道を歩いてる片桐さんを発見して以来、一時期ずーっと外ばっか見てたもんな、お前。朝練だって片桐さんを見に来てたんだろ?」
「違いますよ、ちゃんと練習してました」
「声なんかかけらんない、って言ってたのに、ちゃっかりモデル頼んでたし。なにかきっかけでもあったのか?」
「言いたくありません」
あの日の夜、あの場所で泣いてなかったら、大輔くんが声をかけてくることはなかったんだろうか。そう考えると、知り合うことができたのが、とても貴重な奇跡のように思える。