年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
掠れた声にどんどん熱が込められていく。

その声で、あの時交わしたキスの感触が蘇ってきて、私の体もどんどん熱くなっていく。


なのに。


「でも俺は、もう泣かれるのは嫌なんだ」


続いた声からは熱が引いて、代わりに込められたのは強い意思。


「俺はもう、会わない、って決めたんです。木下さんなら、きっと大丈夫。沙羽さんを、幸せにしてくれる」


自分に言い聞かせるように、一言一言区切るように言った。


「……お前の『一番譲れないもの』は、『片桐さんの幸せ』だ、と」

「はい」


はっきりと、大輔くんが頷いた。
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