年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
途中からずっと黙っていたマスターが、おもむろにカウンターの外に手を伸ばして、置いてあったらしい辻井さんの煙草を取り上げた。そのまま一本取り出して、火をつける。

お客さんの前では滅多に吸わないらしいのに、珍しい、と思っていると、辻井さんがいきなり立ち上がった。

「腹減った。ラーメン食いに行くぞ」

「ええ? 今から?」

「酒のあとはラーメンだろ。いいから付き合え。どうせお前だって腹減ってんだろ?」

「まあ減ってますけど……」

お会計を済ませた辻井さんは、そう強引に大輔くんを引っ張って、半ば無理やり立たせたようだ。

「あ、じゃあマスター、ごちそうさまでした……」

「ああ。またな」

煙草をくわえながらマスターがひらひら手を振っている。
なんだか慌ただしく、二人は店の外に出ていった。
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