年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

「……ちょっと突っ込んだ質問をしてもいいですか? 気分を悪くされたらそう言って欲しいんですけど」

重苦しい前置きをする私に、竹田さんが軽い調子で答える。

「どうぞー?」

「事実婚状態の男性がいる、って噂で聞いたんですけど。なんで結婚しないんですか?」

思い切って尋ねた私に、竹田さんは一瞬驚いたようだけど、すぐに笑顔を向けた。

「なあに、木下くんともめてるの? また浮気でもされた?」

「そうではないんですけど」

「でも迷い始めたか」

気を悪くする様子もなく、くすくす笑って答えてくれる。


「私も彼も仕事が大好きでねー。あんまり家庭を持つことに興味がないのよ。今の関係で十分」


やっぱり仕事を優先した、ってことか。

「親とか、何も言いません?」

「んー、まあ、昔は言ってたけどねえ……」

それからくすくす笑いを引っ込めて、言葉を探すような間が空いた。表情は笑顔のまま、だけど少しだけ困ったように目尻が下がる。
< 285 / 462 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop