年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「……ちょっと突っ込んだ質問をしてもいいですか? 気分を悪くされたらそう言って欲しいんですけど」
重苦しい前置きをする私に、竹田さんが軽い調子で答える。
「どうぞー?」
「事実婚状態の男性がいる、って噂で聞いたんですけど。なんで結婚しないんですか?」
思い切って尋ねた私に、竹田さんは一瞬驚いたようだけど、すぐに笑顔を向けた。
「なあに、木下くんともめてるの? また浮気でもされた?」
「そうではないんですけど」
「でも迷い始めたか」
気を悪くする様子もなく、くすくす笑って答えてくれる。
「私も彼も仕事が大好きでねー。あんまり家庭を持つことに興味がないのよ。今の関係で十分」
やっぱり仕事を優先した、ってことか。
「親とか、何も言いません?」
「んー、まあ、昔は言ってたけどねえ……」
それからくすくす笑いを引っ込めて、言葉を探すような間が空いた。表情は笑顔のまま、だけど少しだけ困ったように目尻が下がる。