年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「竹田さん? どうかしました?」
何気なく聞いた私に、竹田さんも何気ない口調で言った。
「私どうやら子供産めないんだよねえ。昔ちょっと病気しちゃってさ」
「……え?」
「手術すれば産めるようになったかもしれないんだけど、どうしてもそうする気になれなくて。子供は諦めた。
昔はね、結婚に憧れたりもしたし、彼の方もそれでもいいって言ってくれたんだけどさ、やっぱり申し訳ないじゃん?
もし他に相手が見つかればすぐにそっちいっていいよ、って言い続けて、もう随分長いこと経っちゃった」
迂闊に触れていい話題ではなかった。笑顔のままの竹田さんに頭を下げる。
「すみません。踏み込んだこと聞いてしまって」
「別にいーよー。もうあんまり気にしてないし」
その声はいつもと変わらない明るい響きだったけど、やっぱり気にしていないなんてことはないと思う。