年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
指輪の箱をボールのようにぽん、と放り投げて、危なげなくキャッチする。

「先にあの話を聞いてたら、こんなもん買わずに済んだのに。あのモデル男に代金請求してやろうかな」

「ごめん、元はといえば私がはっきりしなかったせいで」

「嘘だよ、バカ。これくらいじゃ今まで温め続けた俺の懐は痛まないんだよ。……前言撤回するなら今のうちだぞ? あのボウヤのところじゃ贅沢できなさそうだぞ?」

冗談交じりだけど本気も多分に含まれているそのセリフに、私は小さく笑い返す。


お金も、ダイヤも。私はいらない。


首の後ろに手を回して、小さな金具に指をかける。ずっと胸元を彩り続けていたダイヤのネックレス。今度こそ、祥裄に返さなきゃ。

ネックレスを外して、祥裄の前に静かに置いた。
その一連の動きを黙って見ていた祥裄は、その小さなダイヤを少し寂しそうに見つめてから、顔を上げる。

すっと手を伸ばしてきて、私の髪を掬ってからすぐに手を離すと、にっと笑った。


「お前、短い髪も似合うよ。……行け。絶対幸せになれ」


私は感謝を込めて頷いて、立ち上がった。
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