年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「片桐さん? どうしたんですか……」
「大輔くんは?」
仕事の邪魔をしてしまったかと一瞬怯んだけど、今の私には余裕がない。勢い込んで食い気味に尋ねると、辻井さんが気圧されたように少し身を引いて、困った顔をする。
「すみません、あいつもう今日は帰ったんですよ」
その一言で勢いが削がれて、入っていた力が抜けた。
座り込みそうになるのを押しとどめて、もう一度、気合を入れる。
「じゃあ家にいますよね?」
「あ、ちょっと待って」
すぐに身を翻して走り出そうとする私を、辻井さんが慌てて止めた。
「家じゃないかもしれません。もしかしたら……」
悪戯めいた笑みを浮かべながら、辻井さんは意外な場所を告げた。