年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~


髪を撫でる指の感触を感じながら、しばらく彼の腕の中でまどろんでいた。


「ねえ?」
「はい?」


私が問いかけると、指の動きは止めずに、大輔くんが柔らかな声で答えた。


「どうしてあのベンチにいたの?」


その言葉を聞いた途端に、ぴたっと手の動きが止まる。


「ええっと……」


気まずげに言葉を探す大輔くんに、私は意地悪く質問を重ねる。


「あそこ、私の会社の裏だよね? 周りは家ばっかりだったし、特に用があるとは思えないけど」


心の中で笑いながら、上辺は何も知らないフリを装った。


「あの。その。……すみません」

「なんで謝るの?」

「その、ですね……俺、時々見てたんです。あそこから、沙羽さんのこと」


ものすごく申し訳なさそうに、彼が体をずらして私の顔を覗き込んだ。
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