年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「チェック、お願いします」
辻井さんは軽く頷いて、近付いてきた。私に失礼します、と声をかけてから、髪を念入りにチェックしていく。
私はおとなしく前を向きながら、大輔くんと一緒に、無意味に緊張してしまった。
息をひそめて、辻井さんの言葉を待つ。店の中の空気が、一気に張り詰める。
掬った髪を元に戻しながら、ようやく辻井さんが口を開いた。
「火曜日の朝イチの新規のお客様。お前に任せるから」
「えっ?」
じっと辻井さんの手元を見ていた大輔くんが、弾かれたように顔を上げた。
「新客はどんどん回してくから。既存のお客様の紹介が大半だから、下手なことできないぞ。これで安心しないで、しっかり気合い入れていけよ」
驚きと嬉しさと、いろいろ混ざって声が出ないらしい大輔くんの頭をこん、と小突いて、辻井さんが笑った。
「合格。来週から、お前も俺と同じ、スタイリストだ」