年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
大輔くんが荷物を取りに行っている隙に、辻井さんに話しかける。

「ありがとうございました。辻井さんのおかげで、ちゃんと自分の気持ち、見失わずにすみました」

私の言葉に、辻井さんはいいえ、と穏やかに答える。

「僕のほうこそ、逆にいろいろ考えさせられました。……ちゃんと、後悔しないようにしようと思います」

……それは、いいのか悪いのか。

「頑張ってください、って言ってもいいものでしょうか?」

「多分?」

少し首を傾げてくくっと笑うその顔は、仮面が剥がれた素の笑顔。


「ぐちゃぐちゃこんがらがってるものを、一度きちんと真っ直ぐにしようと思います。じゃないと、俺もあの子もどこにも進めないから」


そう言ってふと遠くを見るようにしてから、私に顔を向けた。


「大輔のこと、よろしくお願いします」


穏やかに笑って頭を下げるその姿は、やっぱり大輔くんのお兄ちゃんみたいだな、と思った。
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