年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
大輔くんと二人、店を出て歩く。前よりも近い距離で、手を繋いで。


ちょっと寄り道してもいいですか、と大輔くんに手を引かれて、やってきたのはあのベンチだった。

この前と同じように、周りには誰もいなくて、ただ自販機だけが光を放っている。

二人並んで腰を降ろす。そうやって落ち着いて周りを見てみると、うちの会社の非常階段がばっちり見えた。
今は暗くてわかりづらいけど、昼間ならそこで泣いている顔も、しっかり見えていただろう。まったく気付いていなかったな。


隣に座った大輔くんが、すっと私の胸元に手を伸ばす。

彼と結ばれた日からまた私を彩り始めた、天使の羽のネックレス。


「こうやって沙羽さんと並んでいられるなんて、あの時は思ってもいなかった」


大好きな、柔らかい微笑みで私を見つめる。


「まだまだ始まったばかり、って感じなんですけど。とりあえず、美容師です、って堂々と言えるようになりました」


向き合った私の手を、両手で包む。ガサガサした、でも温かい手。
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