年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~


「ねえ、あんた、私が子持ちだってことわかってるのよね?」

「わかってる。だから今日はお酒はナシ。早く帰っていいから」


また呼び出されて不機嫌な顔をしながらも、断らずに来てくれる辺り、瑞香っていいヤツだなと思う。瑞香以上に私のことをわかってくれてる人なんて、そうそういない。

「で? 考え直してあんたもうるうるおめめしてみることにしたの?」

「ううん、祥裄のことはもういいや。はっきりトドメ刺されたから」

給湯室の会話を話すと、瑞香の顔がどんどん険しくなっていった。

「その女、想像以上にやるわね。あんたには太刀打ちできないかも」

「まあ、なんかもう張り合える気もしないしさ。もういいか、って」

「なによ、えらくあっさり引き下がるのね。あんたそれでいいの?」

瑞香が不満気な表情を浮かべる。

確かに私も、もっともっと深い痛手を引きずるかと思ったけど、今はもうそんなに落ち込んでいない。それよりもその痛みを塗り替えるような戸惑いでいっぱいで、どっちかといえば今日は、それを相談したかったのだ。

< 36 / 462 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop