年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
辻井さんがちらりと時計に目をやって、それから一番手前の鏡の前に置いてあった携帯に目を向ける。それは多分辻井さんの携帯なんだろうけど、特に連絡が入っているような感じはなかった。

「大幅に遅れるようなら電話して、って言ってあるから、多分もうすぐ来ると思……」

言い終わる前にバタン、と扉が開いた。

「すみません、遅くなって!」

現れたのは軽く息を切らした女の子。少し汗が滲んでいる。

「もしかして走ってきたんですか!?」

大輔くんが驚いたように言って、近くに置いてあったタオルを渡す。

「走ってないけど、早歩き?」

「馬鹿だな、そんなに急いで来なくても良かったのに」

「んー、でも、やっぱり待たせたら悪いので」
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