年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

歩いてくるのでさえむわっとした熱気が絡みついてきて不快だったのに、あの暑さの中を走って……いや、早歩きで来たのなら、たいそう疲れたことだろう。かわいそうに、と思いながら見ていると、その子が私に視線を向けて、にこっと華やかな笑みを浮かべる。

うわ綺麗、と思わず心の中で叫んでしまった。

前に見たときも綺麗な子だなと思ったけど、なんだか綺麗さが増してないか？
初めて見たときに感じた上品な雰囲気にプラスして、華やかさが増している気がする。

「こんばんは。きちんとご挨拶するのは初めてですよね？」

そう言うと、ぱぱっと服の乱れを直して、すっと姿勢を正した。

「綾川花千です。よろしくお願いします」

ふわりと笑ってから軽く頭を下げる。今時珍しいくらいに礼儀正しい子だった。しかも無理してそうしてるんじゃなくて、自然と体が動いている感じがする。

「とりあえず座って落ち着いて。今きっと、大輔がなんか持ってくるから」

辻井さんに促されて、綾川さんが私の隣の椅子に座ると、すぐに私の髪に視線が向けられた。