年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「その髪、黒川くんがやったんですか?」

「うん、あっという間に出来上がってたよ」

「すごい、黒川くん、そんなのできるようになったんだ」

興奮気味に話すその言い方が、なんだか弟の成長を喜ぶお姉ちゃんみたいだった。

「綾川さんは、大輔くんのことよく知ってるの?」

私がそう尋ねると、あ、とどこか照れたように笑う。

「私はお店で話す程度ですけど、たまに武尊さんから話を聞くから。どうしても武尊さんの目線で見ちゃうんです。偉そうですみません」

おー、武尊さんって呼んでるや、と密かに感動してしまう。そうやって名前で呼んでいるのを聞くと、なんだか生々しくて気恥ずかしい。

大輔くんがさっきと同じようにお茶の入ったグラスを持ってくる。綾川さんが受け取りながら、すごいねー、ばっちりだねー、と褒めると、まんざらでもなさそうに大輔くんが笑った。おーい、顔が緩んでるぞー。

綾川さんが落ち着いたのを見計らって、辻井さんが大輔くんに少し意地悪な顔を向ける。

「じゃあどうぞ。存分に『可愛く』してあげて」

う、と途端に大輔くんの顔が強ばる。
くくっと笑って後ろに下がる辻井さんを、鏡越しに綾川さんが不思議そうに見ていた。
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