年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
金魚なんかどうでも良かった。
ただ隣で笑う彼女が、可愛くて仕方がなかった。
気もそぞろの俺が勝負に勝てるわけもなく、四匹目を追ったところであっさり紙が破れて、情けないなあと笑われる。反対に沙羽さんは健闘して、十匹すくったところで一番大きな金魚に挑んで、跳ねたそいつに紙を破られていた。
大勝利、と沙羽さんはご機嫌だ。持って帰っても飼えないので、すくった金魚は結局全部返したけど、俺に勝てて大満足な様子。
何かを見つけたようで、隣からくいくいと俺の腕を引っ張る。
「ね、勝ったご褒美。あれ買って」
指差したのはりんご飴の屋台。そうやってねだられるのも新鮮で、なんだか嬉しい。
大きいものと小さいものがあったけど、沙羽さんは迷わず小さい方を選んだ。大きい方は半端なく食べにくいらしい。
「俺、一回も食べた事ないです」
「えー、ほんと? 私は意外と好き。お祭りでしか食べられないから、見たら食べたくなっちゃうんだよね」
店員から受け取ってそのまま差し出すと、沙羽さんは嬉しそうに袋を取って、舐め始める。