年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
笑いながら近付いて来て、ちょうど辻井さんの隣に立っていた私に目を向ける。
「こちらが噂の美人な奥さん?」
「いえっ、全っ然違います」
あまりに恐れ多い間違いに慌てて手を振って否定する。
へえ、とどこか訝しげにするその人に、辻井さんが苦笑いで答えた。
「後輩の彼女ですよ。話したことあるでしょう、うちの店の期待の新米スタイリスト」
辻井さんが少し前にいた大輔くんに目を向ける。こちらを向いていた大輔くんがぺこっと頭を下げると、その人は、なんだあ、と残念そうにした。
「奥さんはいないの?」
「今は実家に帰省中です」
大輔くんのさらに前にいた綾川さんは、向こうを向いていて、関係ない人を装っている。ちらっと見えた横顔は、動くべきかこの人が去るのを待つべきか、迷っているようだった。
「で、後輩君とその彼女と三人で花火大会?」
「ドライバーとして駆り出されたんですよ。どうせ予定もなかったですし」
「一人で羽伸ばせばいいのに。まあ、君くらい目立ったらすぐ目撃されちゃうだろうし、堂々と浮気もしづらいか」
あっはっは、と豪快に笑うその人の大きな声は、きっと綾川さんにも届いたんだろう。目の端で彼女の姿が動いて、向こうに歩いて行ってしまった。
「こちらが噂の美人な奥さん?」
「いえっ、全っ然違います」
あまりに恐れ多い間違いに慌てて手を振って否定する。
へえ、とどこか訝しげにするその人に、辻井さんが苦笑いで答えた。
「後輩の彼女ですよ。話したことあるでしょう、うちの店の期待の新米スタイリスト」
辻井さんが少し前にいた大輔くんに目を向ける。こちらを向いていた大輔くんがぺこっと頭を下げると、その人は、なんだあ、と残念そうにした。
「奥さんはいないの?」
「今は実家に帰省中です」
大輔くんのさらに前にいた綾川さんは、向こうを向いていて、関係ない人を装っている。ちらっと見えた横顔は、動くべきかこの人が去るのを待つべきか、迷っているようだった。
「で、後輩君とその彼女と三人で花火大会?」
「ドライバーとして駆り出されたんですよ。どうせ予定もなかったですし」
「一人で羽伸ばせばいいのに。まあ、君くらい目立ったらすぐ目撃されちゃうだろうし、堂々と浮気もしづらいか」
あっはっは、と豪快に笑うその人の大きな声は、きっと綾川さんにも届いたんだろう。目の端で彼女の姿が動いて、向こうに歩いて行ってしまった。