年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「じゃあ、セミロングくらいの長さからいきましょう。と言っても今の長さから三十センチは切るので、普通の人にとっては十分バッサリですけど」

「ん、了解。……あ、ねえ、その三十センチって何年分?」

「一ヶ月でだいたい一センチなので……二年半、くらいですかね」

「じゃあもうちょっと切ってもらっていい? 三年分になるように」


祥裄と付き合っていた三年分、それだけは切ってしまいたい。
あいつのために伸ばし続けた長さだけリセットして、また新しく、今度は自分のために変わっていきたい。


具体的に年数を出した私を大輔くんが鏡越しにちらっと見て、でも何も聞かずに、わかりました、と頷いた。

タオルを巻いて、クロスをかけて。髪をいくつかに分けて留めていく手つきは迷いがなくて、手慣れている感じがした。
練習中、って言ってたけど、そう見えないな。


「じゃあ、最初バッサリと。切っちゃいますよ?」

「おう」


切る時はやはり緊張するようで、ゆっくりとした手つきでハサミを入れていく。
シャキンシャキンといい音がして、髪がひとかたまり、ファサっと床に落ちた。
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