年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~

「……結構長いね」


「三年分ですから、そりゃ長いですよ。
……もう戻せませんよ?」

落ちた髪を見て小さく呟いた私を、少し不安げに大輔くんが見下ろす。私からバッサリと、って頼んだんだから、気にしなくていいのに。

「わかってるよ。……続けて」

はい、とどこか神妙に頷いて、大輔くんが手を動かしていく。

シャキン、シャキンとハサミの音が鳴るごとに、髪が床に落ちていく。
髪と一緒に三年分の思い出とか、祥裄に対する気持ちとか、振られた時のやるせなさとかが落ちていく気がした。


大輔くんの手が、三年分の気持ちを全て、取り上げていく。


奪っていくのではなくて、私の心を圧迫しているいろんな感情を、ゆっくりと取り除いていくかのように。
もう悲しまなくていいですよ、と私の手から荷物を一つずつ引き受けてくれているみたいだった。


留めていた髪も全部おろして、シャキン、と最後のハサミが入る。
私の周りに散らばった髪は、折り重なって層を作っていた。


……三年分。すっきりさっぱり、忘れるんだ。


「断髪式、だね。すっきりした」

「俺はすげえ緊張しました」


あはは、とあっけらかんと笑う私に、大輔くんはなんだかほっとした表情を向けていた。
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