年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「ねえ、もしかしてカットモデルと一緒に食事、ってあんまり良くないの?」
さっき気になったことを聞いてみると、大輔くんはいいえ、と水を飲みながら首を振る。
「お客さんに声をかけるのはどうかな、と思いますけど、モデルさんと一緒に食事くらいならよくあるんじゃないかな。どうしてですか?」
「さっき辻井さんにお伺いを立てるみたいな目をしてたから」
「実はこの後、ウィッグの練習見てもらうはずだったんですよ。タケさんの予定空けておいてもらってたから、申し訳ないかな、と思って」
「今からまた練習するつもりだったの?」
店を出る時点で十時半を回っていた。これからまた練習、って、一体何時までやるつもりだったんだろうか。
そういえば前の時も、瑞香に置いていかれたのが十時すぎ、それからシェリーでしこたま飲んだし、大輔くんに傘を差し出されたのは相当遅い時間だったはずだ。日付は超えていたと思う。
「そうですよ。だいたい練習終わって帰るのは、十二時とか一時ですかね」
「……で、明日もまた仕事で朝早いんでしょ?」
「早いって言っても七時くらいですよ。朝練しない時は八時半までに来ればいいし」
七時は十分早いだろう。ていうか朝練、って、朝にも練習してるわけ?
「タケさんはもっと大変ですよ。朝に一度本店に寄ってから来るし、夜も向こうで練習見たりしてるし」
「本店?」
「ノーブルは支店なんです。本店は別にあって、タケさんは事実上どっちもの店長だから」