年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
オオカミ男の襲撃
1
◇
資料室から大量の生地見本を抱えて出てくると、ちょうど私を探していたらしい平山(ひらやま)さんに出くわした。
「お、いたいた片桐、探してたんだ。山田邸の内装プラン、もうできてる?」
「できてますよ。最終的なプレゼンはまだですけど、見ます?」
「ちょっと見せて」
平山さんはコーディネート部門のチーフだ。
入社当初の私を育ててくれた、頼れる先輩。職場では厳しいのに、プライベートでは三児のパパで、奥さんの尻に敷かれていると噂だ。
私の腕からひょいっと生地見本を半分取り上げて、持ってくれる。
「最近頑張ってんじゃん。木下くんと別れたって聞いて少し心配だったけど、どうやら取越し苦労だな」
平山さんは私と祥裄の出会ったころから付き合う経緯まで、ほとんど知っている。一緒に飲んだ時に、三十で結婚したいな、なんていう私の勝手な期待まで話していたものだから、私たちが別れたと聞いて、何かと心配してくれた。
「男と別れてずっと落ち込んでいられるほど、可愛い性格してないんで。もう吹っ切れました」
「その髪は木下くんなんていらないぞ、っていう意思表示なんだろ」
「そうです。もうあいつとは関係ないです、ってアピールですから」
資料室から大量の生地見本を抱えて出てくると、ちょうど私を探していたらしい平山(ひらやま)さんに出くわした。
「お、いたいた片桐、探してたんだ。山田邸の内装プラン、もうできてる?」
「できてますよ。最終的なプレゼンはまだですけど、見ます?」
「ちょっと見せて」
平山さんはコーディネート部門のチーフだ。
入社当初の私を育ててくれた、頼れる先輩。職場では厳しいのに、プライベートでは三児のパパで、奥さんの尻に敷かれていると噂だ。
私の腕からひょいっと生地見本を半分取り上げて、持ってくれる。
「最近頑張ってんじゃん。木下くんと別れたって聞いて少し心配だったけど、どうやら取越し苦労だな」
平山さんは私と祥裄の出会ったころから付き合う経緯まで、ほとんど知っている。一緒に飲んだ時に、三十で結婚したいな、なんていう私の勝手な期待まで話していたものだから、私たちが別れたと聞いて、何かと心配してくれた。
「男と別れてずっと落ち込んでいられるほど、可愛い性格してないんで。もう吹っ切れました」
「その髪は木下くんなんていらないぞ、っていう意思表示なんだろ」
「そうです。もうあいつとは関係ないです、ってアピールですから」