年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
大輔くんに促されるまま、スタッフルームに足を踏み入れる。

小さなシンクと冷蔵庫に電子レンジ、二人がけの小さなテーブルと椅子に、ポットを置いた細長い棚と丸椅子。洗濯機と乾燥機があって、奥は倉庫とロッカー。
狭い空間にいろんなものが置いてあるけど、きちんと片付けられていて、整然とした印象だ。


私にテーブルのほうの椅子を勧めると、大輔くんはマグカップにコーヒーを入れて、私の前に置く。

自分は丸椅子を引き寄せて私の横に座って、私がカップに口を付けるのを見ていた。


「少し、落ち着きましたか?」


丸椅子の方が低いせいで、私と大輔くんの目線の高さが同じになる。


「うん。ごめんね、いきなり来て。よく私がいるのがわかったね」

「なんとなく外見たら、なんか似てる人がいるなあ、って。後ろ姿だったけど、髪でわかりました」

「こんな暗いのに髪で判断するって、さすがだね」


ふふ、と笑う私の顔を、大輔くんは笑わずにじっと見ていた。


「なにがあったんですか?」


私を案じているのが伝わる、心配そうな目。


「なんにもない」

「なんにもないわけないでしょう。それとも俺には話したくありませんか?」


声からも空気からも、全身で私を心配している様子が伝わってくるけれど、なんて答えたらいいかわからなかった。

そもそも私はなんで泣いたんだろう。
絵里ちゃんを選んだくせに今更あんなことを言ってきた祥裄への怒りのせいか、大輔くんに名前を呼んでもらったことへの安堵のせいか。
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