年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
「来週の日曜日、って夜、予定ありますか?」
日曜日、という言葉に、心がどきん、と音を立てた。
その日は、私の三十歳のバースデーだ。
「ないよ、空いてる。日曜日なんて珍しいね」
今年は一人ぼっちで寂しく過ごすか、良くて瑞香を呼び出すかのどっちかだと思っていた。
偶然とは言え大輔くんと過ごせるのなら、こんなに嬉しいことはない。
「他の日、意外と忙しくて。日曜なんて沙羽さんの予定が入ってるかな、と思ったけど、空いてて良かった」
にこ、と笑って髪を離した。
離れていく手に名残惜しさを感じながら目で追うと、大輔くんは立ち上がって、私の手から空になったマグカップを抜き取った。
「そろそろ帰りましょうか。送ります。
……なんですけど、沙羽さん、荷物どうしたんですか?」
はっ、として時計を見た。すでに結構な時間が経っていた。
マズイ、みんな帰ったかも!
「家の鍵とか全部会社に置いてきたんだけど……もう閉まっちゃった、かな?」
引きつった顔で疑問を投げかける私に、大輔くんは目を丸くして、あー、となんとも言えない声を出した。
「とりあえず、会社、行ってみましょうか。
……もし閉まってたら、俺の部屋でよければ、泊まってください」