年下ワンコとオオカミ男~後悔しない、恋のために~
3
◇
出会った時に焦って飛び出して以来、二度目に訪れる大輔くんの家は、学生が住んでいそうな小さいアパートだった。
大通りから一本入って、似たようなアパートが立ち並ぶ中の一軒、ちょっと年数を感じさせる建物。一階の角、101号室の前で鍵を開けようとして、あ、と何かに気付いたように私を見た。
「鍵、コートのポケットに入ってませんか? 右側」
何か入ってると思っていたのは鍵だったのか、と思いつつ取り出して手渡した。
今大輔くんが着ているのは辻井さんの黒のモッズコート。
大輔くんのグレーのダッフルは私が着ている。
大輔くんのコートをどっちが着るかで、店の玄関の前でひと悶着していると、言い合っているのに気付いた辻井さんとモデルさんがこっちを見た。
「あの、私のコート、着ますか? 私は車で送ってもらえるみたいなので……」
そう言ってきれいに微笑むモデルさんの言葉を辻井さんが遮る。
「ダメ。綾川さんが風邪ひくだろ。……ちょっと待ってて、俺のコート持ってくる。俺のをお前が着て、お前のを片桐さんが着れば問題ないだろ」
そう言ってモデルさんの頭をぽん、と撫でて、スタッフルームに入っていく。……やっぱり仲良さそうだよな、この二人。
結局辻井さんの言う通りにして、私は大輔くんのダッフルを身に纏って、ついでにマフラーもぐるぐる巻きにされた。
コートの袖も丈も大きく余って、大輔くんの大きさを実感する。
なんの香りだろう、甘いいい香りがして、それが時折大輔くんの手から感じる香りと一緒なことに気付く。
シャンプーかワックスか、それとも全部が混ざったのか、とても落ち着く香り。
出会った時に焦って飛び出して以来、二度目に訪れる大輔くんの家は、学生が住んでいそうな小さいアパートだった。
大通りから一本入って、似たようなアパートが立ち並ぶ中の一軒、ちょっと年数を感じさせる建物。一階の角、101号室の前で鍵を開けようとして、あ、と何かに気付いたように私を見た。
「鍵、コートのポケットに入ってませんか? 右側」
何か入ってると思っていたのは鍵だったのか、と思いつつ取り出して手渡した。
今大輔くんが着ているのは辻井さんの黒のモッズコート。
大輔くんのグレーのダッフルは私が着ている。
大輔くんのコートをどっちが着るかで、店の玄関の前でひと悶着していると、言い合っているのに気付いた辻井さんとモデルさんがこっちを見た。
「あの、私のコート、着ますか? 私は車で送ってもらえるみたいなので……」
そう言ってきれいに微笑むモデルさんの言葉を辻井さんが遮る。
「ダメ。綾川さんが風邪ひくだろ。……ちょっと待ってて、俺のコート持ってくる。俺のをお前が着て、お前のを片桐さんが着れば問題ないだろ」
そう言ってモデルさんの頭をぽん、と撫でて、スタッフルームに入っていく。……やっぱり仲良さそうだよな、この二人。
結局辻井さんの言う通りにして、私は大輔くんのダッフルを身に纏って、ついでにマフラーもぐるぐる巻きにされた。
コートの袖も丈も大きく余って、大輔くんの大きさを実感する。
なんの香りだろう、甘いいい香りがして、それが時折大輔くんの手から感じる香りと一緒なことに気付く。
シャンプーかワックスか、それとも全部が混ざったのか、とても落ち着く香り。