恋する白虎
「杏樹」

玄関ドアを開けると、永舜が仁王立ちで待っていた。

杏樹は永舜の顔を見ずに、彼の脇をすり抜けようとした。

その時、杏樹の体から僅かに独特の臭いがしたのを、永舜は見逃さなかった。

この臭い……窮奇か!!!

反射的に杏樹の腕をつかみ、背中を壁に押し付けて永舜は杏樹を両腕で囲った。

「……誰と会ってた?!」

低い声を響かせ、苛立たしげに光る切れ長の眼で見下ろされ、杏樹はすくみあがった。

何も言えないで息を飲む杏樹を見て、更に永舜は語気を荒げた。

「答えろっ」

杏樹は、必死で泣くまいと思った。
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