恋する白虎
「なによっ!」

泣くまいと思っているのに、そんな決意を裏切って、涙は頬を伝った。

「どうして怒るのっ!?永舜だって美雨と楽しそうにしてたじゃんっ!!私にだけ怒んないでよっ!!」

杏樹は、無理矢理永舜の腕を振り払うと、背を向けて歩き出した。

「杏樹、待て」

「待たないっ」

永舜は杏樹に腕を回し、後ろから抱き締めた。

永……舜…。

「俺は…お前を好きだと、ちゃんと伝えた。
お前はどうなんだ。俺が、嫌か?」

永舜がそこまで言った時、杏樹が振り返って永舜を見上げた。

「好きだよっ!
私は永舜が好きだよっ。
好きになっちゃったよっ!
でも、それを言ってどうなるの!?
白虎に恋して、誰にも見えない永舜に恋して、私はどうなるの?!」
< 101 / 270 >

この作品をシェア

pagetop