恋する白虎
涙を溜めた大きな瞳が震えるように光り、杏樹は永舜の胸を拳で叩いた。

「好きになんかなるんじゃなかったよっ」

「杏樹、杏樹」

永舜は切れ長の瞳を熱っぽく輝かせ、端正な顔を傾けて杏樹に近付けた。

「愛してる、杏樹」

永舜は杏樹に優しく口付けた。

唇を離すと、熱っぽく杏樹を見つめる。

「杏樹、俺はお前を愛してる。どうしても、この想いは止められない」

杏樹は、ちょっと笑った。

「私は、止める。止めるよ、永舜。永舜と恋をしても先がない」

涙を流しながら心許ない微笑みを浮かべた杏樹を見て、永舜は彼女を深く抱いた。
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