恋する白虎
あ、杏樹レベルね、助かります……。

『百年白虎帳、百試練。白虎を写す人間の心を奪ひ、西天へ連れ帰り夫婦となる事』

「へ?」

「つまり、百個目の試練は、白虎を見る事が出来る、人間の女の心を奪い、西の方角の天に連れて行って、結婚する事」

……。

杏樹は真麻に、学食のアイスをおごる約束をして丁寧にお礼を言うと、電話を切った。

それから、胸に言い様のない思いが込み上げ、そのどす黒い煙の塊のようなそれが、全身を駆け巡るような感覚がした。

杏樹は、帰ってきたばかりの部屋を飛び出した。

全速力で走り、虎檜(こかい)神社の鳥居をくぐると、辺りを見渡した。

修復作業中の人達に気付かれないように永舜を探す。

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