恋する白虎
な、なんとでも言ってちょうだい。

真実を話すよりマシだわ。

杏樹は、ぎこちなく笑って慶吾をみつめた。

「何でもないの、あはははははっ」

「変なヤツ!じゃあな」

慶吾はサッサと自分の家へと姿を消し、杏樹はその後ろ姿を見送ってから溜め息をついた。

…今日は生まれてから一番最悪な日だ。

「やだな、こんな日に独りぼっちなんて」

杏樹の両親は、海外勤務中だ。

もう半年になる。

杏樹は呟いてからブルッと頭を振って、勢いよく玄関ドアを開けながら思った。

さっさとお風呂に入って寝ちゃお!

で、明日には忘れるんだ!

そう決心して杏樹はバスルームに向かった。
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