恋する白虎
杏樹はチッと舌打ちした。

苛立たしげな杏樹の舌打ちに、たじろぐ永舜。

「貼ったばかりのお札が、ない」

「……」

「返して」

どうしよう、食ってしまった。

なんの言い訳も思い浮かばす、杏樹を見つめる永舜。

そんな永舜を白けた表情で見つめ、杏樹は囁くように言った。

「もしかして、食べちゃったんじゃないでしょうね?」

その、もしか、だ。

冷や汗が出る思いで、永舜は杏樹の次の言葉を待った。

すると、先程のうんざりした表情とは一変し、杏樹は満面の笑みで永舜を見上げた。
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