恋する白虎
人間界で、永舜はもうやることがなかった。

白虎帳の最後の課題以外は。

最後の課題は、杏樹を西天へ連れ帰り妻にすることで、それは杏樹の心次第である。

永舜は、間借りしている部屋のベッドの上で、あぐらをかいて考えた。

西天はいわば、ひとつの国のようである。

自然が豊かな人間界の土地によくにている。

西天にある俺の屋敷を、杏樹は気に入るだろうか。

一番明るいあの部屋を、杏樹の部屋にしてやろう。

いや待てよ、杏樹だけの部屋は、やめだ。

俺が入れてもらえない可能性がある。

屋敷にいるときは、出来るだけ一緒にいたい。

永舜は、あれやこれやと思いを巡らせているうちに、思い立った。

杏樹を迎えに行こう。

いつも家で帰りを待っているが、今日は驚かせてやれ。

永舜は、男らしい口元をゆるめた。
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