恋する白虎
「杏樹」

慶吾は帰り支度を始めていた杏樹に、後ろから声をかけたが、ガヤガヤとしたクラスメイトの声が邪魔をした。

背の高い慶吾がドアを塞ぎ、入れない千里は、一際大きな声をあげた。

「杏樹ー、旦那が呼んでるわよ」

えっ!!

思わずビクッとして声のした方を見ると、慶吾の背中をドンドン押して、横から千里がニヤニヤしている。

だ、旦那って……!

慶吾も心なしか照れ臭そうに千里の頭を小突いた。

「バカ、まだ結婚してねー」

慶吾は精悍な体を屈め、杏樹の顔を覗き込んだ。

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