恋する白虎
永舜は、男らしい顔をピクリとも動かさない。

「永舜」

「帰るぞ」

永舜は、杏樹の手を掴むと、早足で歩き出した。

涼やかな瞳が、今はとても冷たく見える。

永舜は校庭に出るや否や、拳を固めた片手をもう一方の掌で包み込み、瞬く間に白銀の虎に変わると、杏樹の服を噛んで掴み、背中に放り投げた。

「しっかり掴まってろ!」

言った直後に地を蹴り、永舜は空高く舞い上がった。

「きゃあっ」

永舜はぐんぐんと空を翔け、あっという間に杏樹の家に着いた。

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