恋する白虎
杏樹を下ろすと人の姿に変わり、再び腕を掴んで家の中へと引っ張って入り、永舜は彼女に向き直った。

「永舜……」

その眼差しにいつもの温かさはなく、永舜は静かに杏樹を見つめた。

「永舜、怒ってるの?」

「神社の彼って、俺の事か」

胸の中の何かが小さく跳ねて、杏樹は息を飲んだ。

「永舜……」

男らしい口を引き結んで、永舜は杏樹を上から見下ろしている。

「お前は隣の小僧の、なんなんだ」

「え?」

永舜は杏樹を見つめたが、茶色の大きな瞳が不思議そうにこちらを見ていて、その純粋さに胸が焦げそうになった。

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