恋する白虎
杏樹は駅で友達と別れ、トボトボと歩いた。

美雨との事が、頭から離れなかった。

……確かに、大して美雨とは親しくなかったけど、やっぱり永舜が目的だったんだと思うと、悲しかった。

「よう!」

顔をあげると、脇の街路樹に窮奇がもたれて、こっちを見ていた。

杏樹は、とっさに笑顔を作った。

「このあいだは、ありがとう」

窮奇はニヤッと笑った。

「浮かねぇツラだな。どーした?」

自分の頬を撫でながら、窮奇は赤い瞳で真っ直ぐに杏樹を見つめた。

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